日々時々 一瞬刹那 月日もまた旅人なれば。
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ただの駄文。
炎嬢、大変お待たせしました、ってことで。
「あれ、あいつもう行った?」
ドアを細く開けて中を覗いて翔が呟く。
ぽつんと部屋に居た赤毛の少年がきょとっと首をかしげた。
「コウ、世良知らね?」
ふるふると首を振った紅蓮に、そっかと返し、
身を翻したその後ろ、
「行ったけど行ってねーぞ」
「・・・・・っっ・・・わ、びくった・・」
茶色の髪に淡い瞳、悪戯っぽく少年は笑んだ。
「ビニールハウス。花、貰ってくるってさ」
「あー・・・言ってたな、そんなこと。一緒じゃなかったのか?」
「ちょい、頼まれごと」
そう言いながら、出入り口を塞ぐ翔にのしかかって部屋の方へ
世羅はふっと声をかけた。
「コウ。オウが、なんか呼んでた。急ぎじゃないらしいけど」
受けて紅蓮はふいと立ち上がり、ぺこんとひとつ頭をさげる。
机の方に向かい、数冊本をまとめていると、
んじゃな、とドアが閉められる。
肩越しに、扉の向こう、遠ざかる声を見送って、少年はほんの少し笑った。
「世良ー」
ばさっと花束を抱えなおして、彼は呼び声に振り向いた。
「翔、世羅っ」
動きに合わせてふわりと揺れた、銀の髪が光を吸い込む。
「おーおー、結構な量な・・・っと」
苦笑気味に言った翔にがさりと花が手渡される。
花びら越しに世良が言った。
「誕生日なんてとっくに過ぎてて合わす顔がないでしょ」
「いんだよ、どーせ期待なんてされてねーし」
翔は言って、歩き出す。
世良と世羅は顔を合わせて同時に笑い、後に続いた。
きぃ・・・と少し錆びた音。
ハウス内に風が訪れる。
少し強めの風に、雲が流れる。
見上げる翔の傍らに並び、世羅が思いきり伸びをした。
「――っ・・・っし!」
「行きますか」
続けるように、世良が問い。
空と若葉が同時に笑った。
ただひとつだけ きみに伝えるための道行き。
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