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日々時々 一瞬刹那  月日もまた旅人なれば。
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半日くらいずっと車内だったので特に何があるわけでもありませんが。
とりあえず、炎嬢にお題もらったので小話でも。
ものすごく駄文ですが、興味ある方は続きへどうぞ。


  ・・・一応読みです。
  世良→せら  世羅→せいら


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  前髪からは雫が落ちる。
 フードはしっとりと濡れて、もうこれ以上はいくら濡れても大差ない。
 眼を瞑り、雨粒で顔を洗うように少年は上を向いた。
 

 「世良」


 不意に、名を呼ばれて立ち止まる。
 前方にいたのは茶色の髪の少年。

 「雨雨降れ降れ兄ちゃんが♪ってね」

  相手を認識してそのまま止まってしまった少年に
 呼んだ方の少年はそうたたまれた傘を差し出した。

 「世羅」

 呼ばれ、彼はにかっと笑う。
 「あーあ。すっごい滴」
 予想外に面食らい、取る手も出さない世良に、
 世羅は傘を開いて渡した。
 ようやくそれを受け取り、少年は言う。

 「よくみつからなかったね」
 「ばっちり。大体、もう熱は下がってたしな。
  買い物に行ってくるってさ」

 傘の下、笑う世羅を世良はふいっと覗き込む。

 「ほんとはまだ熱あるんじゃないの?顔、ちょっと赤いよ」
 「あぁ、途中走ってきたから」

 「なんで?」

 道理で足元がいやに濡れているはずだ。
 そう思いながら、彼はきょとっと聞き返す。
 そんな世良に、世羅は悪戯っぽい笑みで返した。


 「迎え、期待しないんだろうなって思ったから」


 「・・・・・・・・・・・」

 表情から図星と読み取り、世羅が笑う。

 「じゃのめじゃないけど迎えに来たぞ。うれし?」
 「・・・・・・・・・。ありがと」

 嬉しいと、口に出す代わりに世良はふわりと笑って言った。


 「お?」

  ついとひいた雨音に顔を上げる。
 少し先にある大きい水溜りの、波紋がゆるゆる少なくなった。



 「・・・・・・おひさまは強いね」


 「え?」

  歩き出そうとしていた世羅が振り返る。

 「んーん。なんでもない」

 にこっと笑って誤魔化す彼を特に追及したりはせずに。

 「?・・・ま、いいや。ほら、早く帰ろ」
 「うん」

 伸ばされた手を、同じくらいの手が握る。


握ったその手はむしろ少し冷たいくらい。
それでもやっぱりあったかかった。


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基本的には面倒くさがり。
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